
【商品開発秘話】従来の常識に縛られない「立てて運べるお弁当箱"フードマン"」開発担当に商品への想いを聞いてみた。
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"立てて運べるお弁当箱" フードマン。従来の「お弁当は横向きに持ち運ぶもの」という常識をくつがえし、スマートなデザインと機能性で市場に新しい驚きとワクワクもたらしました。
そんなフードマンの開発初期から携わり、企画をリードしてきた 企画開発部 部長・辻田さんに、誕生の裏側を伺いました。
目次
01:朝の電車で気づいた、"お弁当箱の課題"02:市場にはない"男子弁当"の可能性
03:"立てて運ぶ"を実現するための試行錯誤
04:「持ち運びの新常識」が広がる
05:フードマンのこれから
06:インタビューを終えて
01
朝の電車で気づいた、"お弁当箱の課題"
———シービージャパンを代表する人気商品となった“フードマン”。その開発のきっかけは、一体どんなものだったのでしょうか。
「フードマンの誕生は、ちょっとした朝の電車での気づきでした。電車の中で、スーツ姿の男性がランチトートを抱えているのを見たんです。ビジネスバッグに加えて、お弁当のバッグまで持つのって……ちょっと大変そうだなって。」
そう話すのは、フードマンの開発に長年関わった企画開発部 部長の辻田さん。

企画開発部 部長 辻田さん
「朝の通勤時間、電車の中で見かけたサラリーマンたち。ビジネスバッグに加えて、ランチボックスやランチトートを抱え、両手がふさがっている様子が気になりました。
特に細身のビジネスバッグには、お弁当箱を入れるスペースがほとんどない。かさばるし、不便で持ちにくそうな印象を受けました。でも、持っていきたい人は多いはず。スマートに持ち運べるお弁当箱って、ないよな......?」
このモヤモヤが、後にフードマン誕生へとつながっていきます。
02
市場にはない"男子弁当"の可能性
「ちょうどその頃、"男子弁当"という新しいトレンドが生まれ始めていました。それまでは、お弁当といえば女性が作るもの、または子供や旦那さんに持たせるものが主流でした。でも、共働きが当たり前になり、男性が自分でお弁当を作って持って行く文化が広がり始めていたんです。」
この社会背景の変化を捉え、市場調査を開始。

「市場を見ても、男性向けのお弁当箱って意外と少なかったんです。あっても二段弁当で、ほとんどが黒色。種類も少なくて、選択肢があまりないなって。
当時、会社の営業と企画がタッグを組んで商品提案を行うプロジェクトが進行していたため、このモヤモヤを思い切って話してみました。すると、意外にも反応は上々。そこからチームでアイデアを出し合い、「立てて運べる」お弁当箱というコンセプトが誕生しました。
また、当時の会社戦略とも合致していました。それまでのシービージャパンはお弁当箱のカテゴリーをそこまで強化していなかったので、新しい切り口での参入はチャンスだと先輩が言ってくれたんです。」
こうして、『男性が持ち運びやすく、かつスマートに収まる、立てて運べるお弁当箱』を作ることに。フードマンの開発が本格的にスタートしました。
03
"立てて運ぶ"を実現するための試行錯誤

※薄型弁当箱 抗菌フードマン800ml
———フードマンの開発では、どのような工夫やこだわりが詰め込まれたのでしょうか。
「最初にこだわったのは、『A4書類と一緒に収まるサイズ感』です。ビジネスバッグに入れるなら、書類のサイズに合わせるべきだと考えました。日本ではビシネスバックのサイズはA4が主流なので、A4の短辺(約21cm)に合わせればピッタリ収まるはず。
また、薄さにもこだわりました。とにかく薄い弁当箱を作りたく、35mmという薄さにすることができました。」

しかし、当初はさまざまなアイデアが飛び交っていたそう。
「最初は5段弁当みたいなアイデアもあったんですが、チーム内で『食べにくい』と却下されました。マイナスポイントが多かったんです。そこで『いっそ、立ててみようぜ!』という発想に。でも、『立てたらおかずが崩れるのでは?』『立てると汁漏れするのでは?』という大きな課題が出てきました……。
これが最大の懸念点でした。おかずとご飯が混ざってしまったら、せっかくの弁当が台無し。それに、レイアウトが固定されていないと、お弁当のどこに何を入れるかで悩んでしまう弁当男子が増えると思ったんです。そこで、一体型の中仕切り構造にしました。

その結果、おかずが崩れにくくなり、主菜・副菜・主食のバランスが取れた設計になったので、レイアウトを考える手間も減り、お弁当作りがぐっと簡単になりました。
汁漏れに関しては、本体と中仕切りをシーリングするWシーリング構造に。4点ロックの"汁漏れしにくい"仕様にしました。」
その他にも、デザイン面でも様々な工夫が施されました:
- ご飯やおかずが美味しく見えるように、内側は白色に
「普通のお弁当箱は外だけでなく内側も黒いものが多かったのですが、黒よりも白の方が料理の色がきれいに見えるし、食欲も増します。そこで二色成形の技術を使って内側を白にしました。」
- 洗いやすさを考慮
「パッキンを一体型にしたのは、日本人の特性として『外せるなら洗ってしまう』と考えたから。毎日使うものなので、洗い物を減らしたかったんです。コーナーも丸みを持たせて、洗いやすく食べやすい形状にしました。」
- 片手で持ちやすいフォルム
「二段弁当だと、食べるときに置く場所が必要になります。フードマンは片手で持てる形状なので、狭いデスクや公園のベンチでも使いやすくなっています。」
こうした一つひとつのこだわりが、”立てて運べる”というコンセプトを中心に集約されていきました。
「とにかく”立てて運べる”という軸をぶれずに追求しました。結果的に、それまでバラバラだった要素が一つにまとまり、良い商品が生まれたと思います。何か1つに特化したコンセプトをとがらせることが、結果的に消費者に刺さるんですよね。」
04
「持ち運びの新常識」が広がる
———様々な発見とアイディアによって誕生したフードマンでしたが、販売開始当時の反響はいかがでしたか。
「販売開始直後は、フードマンはそれほど大きな注目を集めませんでしたが、ある企業様が関心を寄せてくれたことで、状況が一変。そこから徐々に話題が広がり、フードマンの流れが大きく変わっていきました。
また、"面白い商品"を探していたメディアが取り上げてくれて、徐々に広まっていきました。今では同じ業界内では知らない人がいないぐらいの評価をいただけるようになりました。」
さらに、SNSが流行し始めた頃、思わぬ展開が。
「Instagramでデコ弁が流行り始めていた時期で、フードマンって俯瞰で見ると正方形や長方形なんですよね。写真映えするし、背景も気にしなくていい。気が付くと『#フードマン部』というハッシュタグが自然発生して、知らないところで広がっていったんです。中には『フードマンをベースにした料理本を作りたい』という声もいただきました。」

※薄型弁当箱 抗菌フードマン800ml
ユーザーからは次々と感想が届きました。
「『立てて運べるのは画期的!』『通勤バッグがスッキリした!』『子供に持たせても安心』という声をたくさんいただきました。
特に、お子さんにお弁当を持たせるときって、『ランドセルに入れるときはこの向きにしてね』って言うことが多いみたいなんです。でも、子供って……ランドセルを投げたりしちゃうじゃないですか(笑)。だから、汁漏れしにくくて、かさばらないフードマンは、まさにぴったりだったみたいです(笑)。」
そんな中、予想外の声も。
「『旦那や子供向けに買ったけど、私も欲しい。でも800mlだと多い……』という女性ユーザーからの声が増えてきたんです。」

※薄型弁当箱 抗菌フードマン400ml|800ml
女性はカバンが小さめで、化粧品なども入っているとスペースが限られます。そこで新たに400mlのサイズが登場。A4の短辺サイズはそのままに、容量を抑えたモデルが誕生しました。
さらに女性ユーザーならではの要望も。
「女性だとネイルをしていてフタが開けづらいという意見もありました。そこで、400mlは開けやすい仕様にするなど、細かい修正を重ねていきました。」
その後も進化は続き、『400mlでは足りないけど、800mlは多すぎる』という声に応え、600mlのミドルサイズも登場。

※薄型弁当箱 抗菌フードマン600ml
「600mlは今では一番の王道サイズになっています。このサイズからは取り外しができる中仕切りを入れて、お弁当作りを楽しむことができる仕様にしました。」
こうして、ユーザーの声を取り入れながら進化を続け、性別や年齢を超えて愛される商品へと成長していきました。
05
フードマンのこれから
今では、フードマンシリーズはさらに拡大。500mlサイズが加わり、さらにフードマンおにぎりも登場。

※薄型弁当箱抗菌フードマンおにぎり|薄型弁当箱 抗菌フードマン500ml
「500mlは400mlでは少ないけど600mlだと多いと感じる方向けのサイズです。フードマンおにぎりは、A4サイズの制約を少し超えて、"おにぎり"を楽しめることに特化して作りました。」
また、フードマン専用のアクセサリーも充実。

※FOODMAN 専用ケース|フードマン専用 抗菌箸
「フードマンの特徴的な形状に合わせた専用ケースを作りました。また、フードマン箸も開発しました。これは長さ21cmで、まさにフードマンのサイズに合わせたもの。フードマンケースにすっぽり収まる形状になっています。ちょっとしたことですが、使いやすさがグンと上がります。」
———これからのフードマンについて、どのような展望をお持ちですか。

「ただのお弁当箱では収まりたくないんです。フードマンは持ち運ぶことを考えて生まれた商品。つまり、出先に持って行って食を楽しむためのもの。私たちは"もの"を作るというよりも、出先で食べるという"こと"を作りたいと考えています。フードマンは様々な幸せを運ぶツールなんです。
これからもフードマンは展開を広げていって、弁当界の革命児として新しい提案を続けていきます! よりラインナップも増やして、もっと多様な食の楽しみを提供していきたいですね。」
06
インタビューを終えて
今回は、企画開発部 部長の辻田さんに、フードマンの開発秘話を伺いました。インタビューを通して最も感じたのは、"異常なほどのフードマン愛" です。
細部の細部までこだわり抜く探究心、思いもよらない斬新なアイデア、そして生みの親である辻田さんの深い愛情。それらすべてが、このフードマンには詰まっています。
新生活が始まるこの季節、みなさんもフードマンを手に取って、新しいランチスタイルを楽しんでみませんか。